すっかり静まり返った
私の自宅付近の
マンションに横付けして
薫は車を止める。

片手で
シートベルトをはずして




ドアを開き
運転席側を省みると
薫はなにやら
苦しげに身を屈めている。

「どうかしたの？」
と聞いてやれば

まだ安堵が足らない
名残惜しさがあるようで・・

このままここに
滞在するわけに
行かないような
危ない場所でもあって

仕方がないので
近くの公園まで
引き返す。


さっきの行きなれない
名前も知らない公園とは違う・・

本当に私の日常の
プライベート範囲の公園だから
やや緊張感が増す。

樹の裏側へ連れ立って
いつものように抱き締め、
腕に渾身の力を込める。

私がかつてされたように
酷くきつく締め上げる。

私の腕の力強さが
肺を押しつぶす
縄のように
鎖のように食い込んでいく。

これほどの締め方をして
抱かれた事は
私も主と出逢うまで
かつてなかった。

そう。

それと同じように
私の薫にも
同様の感覚を
味あわせるようにして教える。

そうして
溢れ出そうな
想いを塞ぎ留める。


公園の脇の通りを
また男性がひとり
歩いて通り過ぎていった。

視線は
私たちの
暗闇のシルエットに
注がれている。


身体を翻して
今度は樹に押し付けて
抱き締める。

ただの恋人同士にしか
見えないような行為だけれど

またそれとは違っている。

奴隷と主人の間にある
親密さとは・・・

いわゆる
互いの心と身体の
間に横たわる
居場所の確認なのかもしれない。

テーマ:SM - ジャンル:アダルト

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